
鍋物の歴史
鍋物を食べる時に、どんな鍋を使用していますか?
我が家の場合はほぼ土鍋です。それにしても電気式の鍋などに比べると、土鍋だとより美味しく感じるのが不思議ですよね。
鍋物に限らず、料理の鍋は今でこそ、鉄やアルミなどが大半を占めていますが、鉄製の鍋が少し前までは一般的でした。
さらに時代をさかのぼると土(つち)製、つまり土焼きの鍋が主流の時代が長く続きます。
鍋というのは「肴瓮(なへ)」の意味とされています。
肴はさかな、瓮は瓶と同じ土焼きのカメのことを言います。
土焼きの器でものを煮た時代に「肴瓮(なへ)」という言葉が生まれて、その後鉄製の鍋が出来ると、鍋の字ををあてるようになって今の『鍋』という言い方になったと言われています。
■鍋奉行は主婦でした!農家では、囲炉裏を使用して食事をしていました。その時代には、主婦の象徴が杓文字(しゃもじ)と鍋。この時代の鍋はもちろん鉄鍋。
囲炉裏の周りで主婦が座る席を鍋座(なべざ)、鍋代(なべしろ)、女座(かかざ)と言います。これは主婦が食事の主導権を持っていて、さらに、鍋がひとつの家庭を表していたということになります。
鍋裏の火があたる部分を「鍋尻(なべじり)」と言います。「鍋尻を焼く」という言葉は夫婦の仲がむつまじい姿の意味になります。また「鍋尻の世話を焼く」という言葉は、他人の世帯にいろいろくちばしをいれるという意味になります。
このように、鍋ものは家庭の象徴。皆でひとつの鍋をつつくことに大切な意味があるのですね。
■火とともに鍋物の歴史がある!囲炉裏の名前の起こりは、昔大きな鉄鍋を炉にかけて、湯気の立つ鍋を囲んで食事をとることに由来しています。
時代と共に、煙やススを嫌って、木炭を使う「こんろ」の時代になります。
七輪などの「こんろ」は持ち運びができるので、ガスが普及してくるまでは、便利な炉のひとつとして重宝していました。
また、この「こんろ」が座敷に持ち込まれて、食卓専用になったのが『小鍋立て』です。今は『小鍋立て』には固形燃料が使われていますね。
さらにこの鍋料理をさらに盛り上げたのが、明治時代に流行った牛鍋。やがて、家庭料理における炭火の「こんろ」はガスの発達によって終わります。
しかし、卓上でいただく鍋物はそのままカセットコンロという形で定着をしていきます。
そして、その姿はオール電化などの普及によって今は電磁調理器や卓上用のIHヒーターに変わりつつありますが、カセットコンロはまだまだ現役。
その背景には、鍋の火床としての歴史とそれに連動した火、炎の歴史があるのですね。
■鍋奉行の役割食材には、美味しく煮るための煮込み時間が異なるものが多くあります。
「板前おおくしてあつかうものをそこなう」という言葉がありますが、これは鍋の温度もわきまえずに、好き勝手に食材を入れるのは美味しさが半減するということを意味しています。
そこで、鍋座の主が鍋をお守りして、おいしい煮えばなを楽しめるようにしているのが鍋奉行なんです。
昔はこの鍋奉行は、主婦の役割でしたが、今は皆それぞれにうんちくを持っていて、皆が鍋奉行!
でも、この鍋座に座る人の采配が、材料の吟味や味付け、そして煮えばなの判断、火加減を含めて、美味しい鍋物のキーパーソンになるというのもまた事実と言えます。
鍋物の話し

■鍋物の歴史・・・『鍋物のルーツは?』 『鍋奉行って昔は主婦だったんですって!』 『鍋奉行の本当の役割とは?』 『鍋物の歴史は火と共にあり!』など鍋物の歴史などの話しです。 続きはこちら
■鍋物を作る器・・・一般的には土鍋だと思いますが、その他にも鉄鍋など鍋ものの器があります。そんな器の話しです。 続きはこちら
■おいしい出しを引く・・・鍋物の美味しさのポイントはズバリ!出しにあります。美味しい出しの取り方についての話しです。 続きはこちら
■低カロリー、低塩分な鍋物のコツ・・・ダイエットにもよいと言われている鍋物ですが、意外に高カロリー、高塩分になってしまうことがあります。低カロリー、低塩分で健康的な鍋物のコツとは? 続きはこちら
■おいしい鍋物へのこだわり・・・こだわれば、こだわるほど美味しいのが鍋物です。美味しく鍋物をいただくためのこだわりを10項目にまとめてみました。 続きはこちら